2018年9月14日
第51回
いつの時代も、人・モノ・情報が集積する『秋葉原』
文:荒井直子 撮影:佐藤真美
電気街とポップカルチャーが世界の人を引き寄せる
“世界有数の電気街”“ポップカルチャーの集積地”などさまざまな形容詞で語られ、世界的な観光地としても広く知られるようになった『秋葉原』。町行く人たちは国籍も人種も年齢もじつに多種多様。独特のエネルギーに満ち溢れ、どこか異国の地にいるような不思議な感覚になる町だ。
実質的に『秋葉原』と呼ばれているエリアの住居表示が「千代田区外神田」であることからもわかるように、秋葉原は神田から連なっており、江戸時代初期より神田とともに武家地や商人地として発展。さらに、古くから江戸中心部に位置し、神田川を介した物流の要所でもあった。
そうした地理的要因もあり、明治時代に鉄道が続々と開通。まず1890年に上野駅から延伸した鉄道駅として『秋葉原』駅が開業(当初は貨物専用駅)。続いて、1912年には神田須田町付近に中央線の『万世橋』駅も開業し、東京駅まで延伸される1919年までは都心のターミナル駅としても機能していた。さらに、関東大震災後には神田須田町から秋葉原駅前に青果市場が移転。いつの時代も人とモノがせわしなく行き交う東京を代表する町のひとつとして存在していた。
その秋葉原の町が現在のような電気街・カルチャータウンの顔を持つようになったのは、戦後に集まった闇市が由来していると言われている。もともと秋葉原には戦前から家電卸の企業がいくつもあったところに、神田にあった東京電機大学の学生向けのラジオパーツを扱う露店が戦後続々と集まるようになり次第に電子部品を販売する店が集中。それが礎となり、高度経済成長期における家電製品の大衆化が拍車をかける形で電気街へと発展していった。
その後、ファミコンやパソコンの普及に伴い、ゲームなどコンピューターソフトを扱う店も集まるように。さらにオーディオや音楽ソフトを扱う店も多く集まったことから、カルチャータウンの顔も追加されていった。
駅周辺の再開発で町の魅力、価値が大幅アップ
こうした経緯もあり、2000年頃までは趣味的要素のイメージが強い町だったように思う。しかしながら近年、大規模な再開発が続々と進行し、町のイメージは大きく更新されている。もっとも大きな転機は2005年頃だろうか。つくばエクスプレス線『秋葉原』駅が開業し、駅前にはアトレ、ヨドバシカメラ、タワーレコードなどポピュラーな大型商業施設が次々と誕生。2006年にはJR総武線・山手線・京浜東北線『秋葉原』駅前の広場・駐車場跡地(元の青果市場)で行われていた再開発により『秋葉原クロスフィールド』がオープン。再開発の敷地内には超高層マンションも誕生し、駅周辺のイメージを大きく変えた。
さらに、現在も万世橋のたもとで進行中の外神田一丁目神田川沿岸地区再開発や、JR『秋葉原』駅と東京メトロ日比谷線『秋葉原』駅間で進行中の神田練塀町地区市街地再開発事業など、大規模な再開発事業がいくつも同時に進行中。まだまだ開発の真っ最中であり、今後の進化も楽しみだ。
これらの新しい建築を伴う大規模再開発と同時に、旧万世橋駅を利用した商業施設『mAAch ecute(マーチエキュート) 神田万世橋』や、JR『秋葉原』駅とJR『御徒町』駅間の高架下を利用した商業施設『2k540 AKI-OKA ARTISAN(ニーケーゴーヨンマル アキオカ アルチザン)』、千代田区立錬成中学校跡地を利用した文化施設『3331 Arts Chiyoda(アーツ千代田 3331)』など、既存の建物に新しい価値を付けるリノベーション的な町の更新も盛んで、多様な町の表情がさらに厚みを増している。東京のみならず、日本を代表する町として世界に名を轟かせるAkihabara。いつの時代も多くの人を惹きつけてやまない町の未来は、まだまだ期待が高まるばかりだ。
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