連載コラム 都心*街探訪

2014年12月15日

第6回
空の大きな「目黒」の低層住宅街

文:坂根康裕 撮影:富谷龍樹

由緒ある神社仏閣

目黒川と桜並木

目黒区の中で、目黒の名が付く住居表示は上目黒、中目黒、目黒、下目黒の4地域である。上目黒と中目黒は5丁目まで、目黒は4丁目、下目黒は6丁目まで存在している。山手通りを挟むように、北から南にかけて順に並び、丁目は都心から西にかけて数が増えていく。「目黒」の由来は諸説あるようだが、そのひとつである「目黒不動尊(瀧泉寺)」は下目黒3丁目に所在。境内には23区では珍しい滝が現存することでも有名だ。山手通りと並行する目黒川は、桜並木が連なり、春は大勢の花見客でにぎわう。最近では秋の「さんま祭り」、冬の「イルミネーション」など季節行事も知名度を高め、自然豊かな風景とともに目黒の風物詩として定着してきたようである。もとより、大鳥神社(下目黒3丁目)の「酉の市」、目黒不動尊で毎月28日に開かれる「縁日」はその歴史が圧倒的に長い。東京のなかでも四季と歴史をともに感じさせる土地柄といえよう。

JR山手線「目黒」駅は品川区内に位置するため、上記アドレスでの鉄道駅は東京メトロ日比谷線と東急東横線が乗り入れる「中目黒」駅のみである。じつは目黒界隈はバス交通の利便性が高い。文字通り、縦横無尽に路線が走り、本数が充実していることも特徴だ。アップダウンの激しい地形でもあるため、自家用車を含め車両を日常的に活用できれば、行動範囲はグンと広がるだろう。目黒通りに軒を連ねるインテリアショップを目指して休日には多くのカップルたちが訪れる。ブラブラと歩くだけでも気分が良いのは、背の高いビルが少ないことも理由のひとつではないだろうか。高速が空をふさぐこともなく、銀杏並木が続く通りは、飽きることのない心地よい空間である。

高台の低層住宅街

目黒通り

ランドマークという表現は適切ではないかもしれないが、目黒の街の個性をひとつ挙げるとすれば、高台の低層住宅街だと申し上げたい。丘陵の地形をいかし、斜面地や標高30m前後の高台には、建ぺい率や容積率(敷地面積に対する建築面積や延床面積の割合)を小さく抑えた閑静な住宅街が広がる。高さ制限も厳しく定められているため、街は明るく、空が大きい。年月を経た低い家屋は植栽に高さを超されるため、緑豊かで季節感に満ち溢れた景観が出来上がる。一戸建てを中心に形成された邸宅街は他にもあるが、都心に近く、地域一帯に同様の光景が見て取れる場所は目黒が代表的といえる。