連載コラム 都心*街探訪

2014年11月13日

第5回
激変する「勝どき」

文:坂根康裕 撮影:富谷龍樹

歴史ある埋立地

タワーマンションが立ち並ぶ勝どきの街並み

東京五輪2020は現存の施設を使う<ヘリテージゾーン>と、おもに新しく施設を作る<東京ベイゾーン>に分かれている。後者が今、何かと話題の「臨海副都心」地区である。近年至るところで大規模開発がかかり、交通インフラが整備され、高層マンションも急増。アベノミクス以前から地価が高騰し、小学校も足りないなど、少子高齢化問題を抱える国、不動産市場とは思えない状況にある。
しかし、臨海副都心地区も広範囲にわたる。勝どき、豊洲といった既存の街を「再開発」して価値を高めようとする地域と、新豊洲や有明のように数年前までほとんど人が住んでいなかったところを「開発」する地域と大きく二分できるのだが、東京五輪2020の施設計画は選手村を除けば、有明、夢の島などの「開発」地域に偏っているといえるだろう。

湾岸エリアにおいて、早くから埋立地として形成されたのは勝どき、月島である。最古という意味では佃。江戸時代にはまだ橋がかかっておらず、渡し船を使って島に住んでいたそうだ。旗本で名は石川重次という人物だったことから「石川島」と呼ばれ、後に企業名としても受け継がれた。
勝どきは長い歴史を実証するように、「地盤が良好」とさえ言える場所が少なくない。鉄筋コンクリート造のマンションの場合、支持層と呼ばれる堅固な地盤まで杭を打って基礎を建設するが、地下約40〜60メートル程度打ち込んで建てる新豊洲や東雲あたりとは違って、「勝どき」は(地点にもよるが)数メートルで到達するケースもある。
月島は、もんじゃ焼きが有名。都営大江戸線の開通などに伴う界隈の再開発によって、下町風情が薄まっていくのかと思いきや、以前に比べて名物の看板を掲げる店舗は増えたように思える。街の個性が明確になるのは良いこと。「再開発」エリアだけでなく、「開発」エリアもそうあってほしいものだ。

物流を変える環状2号線

築地と勝どきをつなぐ「築地大橋(環状二号線)」

勝どき〜月島エリアは、都営大江戸線「勝どき」駅と東京メトロ有楽町線が交差する「月島」駅の2駅が鉄道の利用駅となる。銀座方面へは都バスが便利。本数が多く、それ自体は結構なことなのだが、いかんせん晴海通りは交通量が多い。豊洲、新豊洲、東雲、有明が賑わっていくほどに、逆にドライバーと乗客のストレスは高まっていくのではと危惧してしまう。そこで期待されるのが、環状二号線である。今春、新橋−虎ノ門間「新虎通り」が開通して話題になったばかりだが、2016年には汐留−勝どき間がつながる予定。
バス高速や路面電車も構想に上がっている。凄まじい開発のスピードに肝心の交通インフラが追い付いていない現状といえるが、果たして6年後、どれだけの輸送システムが実現しているのだろう。