連載コラム 都心*街探訪

2016年2月15日

第20回
どこに行くにも便利な「大井町」

文:簀河原由朗 写真:佐藤真美

100年前に大井町駅が誕生。以前は、鉄道と工場の町

「大井町」駅前のホテル・商業施設

毎年8月に、多くの鉄道ファンが大井町に集結する。目的は、大井町駅徒歩5分の東京総合車両センターの夏休みフェアだ。2015年には、八高・川越線209系試乗会や次期山手線車両が展示された。この東京総合車両センターは、その前身である「大井工場」が設けられてから、2015年でちょうど100年。同時期の100年前に、京浜線(現京浜東北線)大井町駅が開業。その後、大井町は鉄道の町として発展する。1927年には目蒲電鉄(現東急)大井町線も乗り入れた。

鉄道の町として交通の利便がいい大井町は、大正時代に多くの工場が生まれた。1918年には、日本光学第一工場(現ニコン大井製作所)。1929年には、三菱重工業大井工場が新設されるなど、その後もさまざまな業種の工場が生まれた。そして、その工場の成長とともに、その近くや通勤沿いの通りに大井三ツ又商店街や大井すずらん通り商店街など個性豊かな9つの商店街や飲酒街が生まれていった。

昭和も戦後となると、工場の多くは撤退し、1953年の阪急デパートを機に、大井町は生活の中心地として変化を遂げてきた。そして、1989年から大井町駅再開発が始まり、きゅりあん(総合区民会館)、1993年にアトレ大井町、1998年にイトーヨーカドーが相次いで開業。さらには近年、四季劇場・夏がオープン。阪急デパートが阪急大井町ガーデンとしてリニュアルオープンするなど、大型商業施設が充実。また、昭和の面影を残す「東小路(JR大井町駅東口すぐ)」が人気のスポットとして注目されるなど、昔からの商店街や飲食街も活性化。新旧の魅力が入り混じり、生活拠点としてますます充実している。

都心だけでなく、国内・海外どこに行くにも便利

横丁路地に連なる飲み屋街

現在、大井町駅はJR京浜東北線・東急大井町線・りんかい線のターミナル駅だ。同時に、京浜東北線の快速や東急大井町線の急行の運行により、人気の町まで短時間で行けるようになった。京浜東北線・快速で、東京駅まで12分。東急大井町線・急行で、自由が丘駅まで9分、二子玉川駅まで16分。りんかい快速線で、渋谷駅まで10分、新宿駅まで16分というアクセスだ。そして、品川駅が新幹線停車駅となり、羽田空港の本格的な国際化が始まるなかで、大井町は都心だけでなく、国内・海外どこに行くにも便利な街だ。

さらに、2020年には田町-品川駅間に新駅が開業予定。その周辺エリアは、「グローバル ゲートウェイ品川」として大規模な再開発が進む。広大な土地に、商業施設やホテル、文化的施設、オフィスなどが誕生する。2027年の開業を目指すリニアモーターカーのターミナル駅が品川に決定した。品川は世界一ビジネスしやすい環境を目指しており、新たな東京の中心地になると言われている。品川駅の隣駅に位置する大井町は、その成長とともにますます魅力を増していくだろう。