連載コラム 都心*街探訪

2014年8月12日

第2回
「青山」の真相

文:坂根康裕 撮影:富谷龍樹

イメージと実際

「表参道」

皆さんは、「青山」と聞いてどんな場所を連想されるだろうか?
世界のブランドが軒を連ねるファッションストリート<表参道>? それとも銀杏並木で知られる<明治神宮外苑>の風景? 有名私立一貫校<青山学院>を挙げる人も少なくないだろう。

しかし、じつのところ、いま例示した三つの場所(のほとんど)に「青山」は付かない。表参道は、その通りの大半が「渋谷区神宮前」に属している。同じく明治神宮外苑は「新宿区霞ヶ丘町」。青山学院に至っては敷地全体が「渋谷区渋谷」である。著名施設で加えるならば、「青山一丁目」交差点北東の広大な<赤坂御所>や<迎賓館>は「港区元赤坂」だ。ついでに申しあげれば、今しがた触れた「青山一丁目」なる固有名詞は「信号」と「駅名」としては存在するのだが、そのような住所は実際には無い。青山を称するアドレスは「北青山」と「南青山」のみである。

域内の地下鉄駅は、「青山一丁目」「外苑前」「表参道」の3駅。「青山一丁目」は半蔵門線、銀座線、都営大江戸線が、「表参道」は半蔵門線、銀座線、千代田線の、それぞれ3路線が交差するマルチアクセスの起点。

地名の由来は諸説あるようで、有力なひとつに「家康の入国すぐ青山常陸介忠成という人物が広い土地をもらいうけた」という説がある。その後代替わりのたびに、召し上げられたり、再度下げ渡されたりと領地は目まぐるしく変わったよう。そもそも所在地の境界は、時代として後付けが多く、その象徴たる対象が範囲のなかにあるとは限らない。そのように考えれば、前出の例など特段違和感を覚えるものでもないだろう。

開放的な印象はなぜ?

「根津美術館」(右)の緑越しに<六本木ヒルズ>を臨む

施設全体が「青山」所在地内におさまり、最も大規模なものといえば、やはり<青山霊園>であろう。空が広く、印象として「南青山は開放感にあふれ、街そのものが明るく感じる」のはそのせいではないかと思っている。『政治家、文人、軍人、実業家、芸能人、科学者等、数えきれない人々が葬られ、さながら日本の近代人物史をなしている』(「写された港区 四」<港区教育委員会>より引用)。

<根津美術館>も同地域を代表する施設。2009年にリニューアルオープンし、快適な環境でゆったりと展示物を鑑賞することができる。約1.7ヘクタールもの広大な庭園は一見の価値あり。都心の喧騒を一瞬にして忘れさせてくれるだろう。

首都高3号線「高樹町ランプ」も地元の人々にとっては影響の小さくない存在では。というのも、東名高速道に繋がる3号線は箱根方面に行くには重宝する路線。渋滞さえなければ「わずか1時間半」で自然豊かなリゾート地へ行ける。著名なランドマークが街の印象を確立させているのではなく、そこに暮らす人たちのライフスタイルがイメージを形作(かたちづく)る点にこそ、「青山らしさ」があるような気がしてならない。