連載コラム 都心*街探訪

2014年7月15日

第1回
未来を開く、TORANOMON(虎ノ門)

文:坂根康裕 撮影:富谷龍樹

変化する<景観>

先月(2014年6月)11日、東京の新たなランドマーク「虎ノ門ヒルズ」(森ビル)が開業した。店舗にオフィス、ホテルや住宅等さまざまな用途が混在する地下5階地上52階建ての複合タワーだ。建物の高さは247メートル。都心では「東京ミッドタウン」に次いで2番目に高い。虎ノ門・神谷町エリアは先日発表があった「ホテルオークラ東京」建替え事業をはじめとして、引き続き再開発計画が目白押し。今後、界隈の景観はガラリと様変わりするだろう。

「港区虎ノ門」と付く所在地は1丁目から5丁目まで存在するが、その区域内の鉄道駅は東京メトロ銀座線「虎ノ門」駅と同日比谷線「神谷町」駅の2駅。両駅ともに他路線との連絡はなく、それぞれ1路線のみのアクセスとなる。とはいえ官庁街に隣接するロケーションで、「霞が関」駅、「新橋」駅、「六本木」駅にそれぞれひと駅、「銀座」駅「赤坂見附」駅にもふた駅で行ける利便の良さは都心屈指といえるだろう。にもかかわらず、意外に大型オフィスビルが少なかったのは、やはり乗換駅が所在しなかったからか。それとも、そもそも虎ノ門〜愛宕地区は一事業所当たりに必要とされる床面積が小さい弁護士事務所など<法曹界に携わる人々の比率が高い街>といった印象があるのだが、果たしてそのどちらが要因として先なのかは定かでない。

「虎ノ門」の由来は、江戸城を取り巻く「御門」のひとつが現在の「虎ノ門」交差点の近くにあったところからきている。当時の城壁の一部が駅周辺に現存する。なぜ「虎」なのかといえば、(諸説あるようだがその有力なひとつが)都市形成における風水「四神相応(しじんそうおう)」の西を守る神が「白虎」だからである。

変化する<アクセスと役割>

さて、「虎ノ門ヒルズ」最大の特徴は、環状2号線が建物の地下を通過すること。これは「立体道路制度」といって森ビルが以前手掛けた「六本木ヒルズ」で活用した手法でもある。環状2号線は、いずれ湾岸を経由して「羽田と20分でつながる」予定だ。東京が国際都市として飛躍するためのインフラ整備の軸になるといっても良い。同線新橋〜虎ノ門間の「新虎通り」は歩道幅13メートル。「東京シャンゼリゼ通りプロジェクト」なる構想も打ち上げられている。将来的には並木が整い、これまで規制により実現が困難だったオープンカフェが連なる景観になるようだ。

ハブ空港化が進み、日本の玄関になりつつある羽田。そこからダイレクトに都心に向かい、まず目にするメインストリートが「新虎通り」である。東京に訪れた外国人が、真っ先に記憶する地名は「GINZA」でも「ASAKUSA」でもなく、「TORANOMON」になる可能性は小さくなさそうだ。