2016年1月14日
第19回
学びの丘「高田馬場」〜「早稲田」
文:坂根康裕 撮影:佐藤真美
江戸情緒と学業の台地
院生まで含めると、じつに5万人を優に超える巨大校が早稲田大学である。そのキャンパスは分散するも、東西線「早稲田」駅地上出入り口は、日中学生の出入りが絶えないイメージだ。尾張徳川家下屋敷があったこの界隈は、戸山公園に代表されるように広大な敷地が多く残されている。早稲田の他、学習院女子大学などの教育機関をはじめ、医療施設や大規模団地などが展開されている。大きな敷地空間は、緑豊かな景観を形成し、山手線の内側であることを忘れさせるほど閑静である。
高田馬場から早稲田一帯は、北を流れる神田川から、地面が大きく隆起した高台地である。山手線内側で最も標高の高い「箱根山」(海抜約44m)は大名屋敷地の築山(庭園)であるが、当該地域を代表する神社仏閣「穴八幡」に入れば、それは瞬時に実感できるだろう。境内の階段を上がると、南に広がる見晴らしに驚くはずだ。まるで高層建物から見る景色のようである。徳川家にゆかりのある御屋敷は高田(馬場)の地名の由来ともいわれ、八幡宮で行われた流鏑馬(やぶさめ)は現在も伝わる伝統行事として知られている。
早稲田の地名は、早く稲作をはじめる風習からきているようで、起点には神田川沿いの低地が関係しているのだとか。東京における所在地の由来は、地形と江戸時代にまつまわるものが多いが「高田馬場〜早稲田」も例に漏れない。
地名と印象の関係
所在地ごとの街区は、ほとんどが細かく、非常に入り組んでいる。「高田馬場」だけは1丁目から4丁目まで比較的大きな整形に近い街区なのだが、早稲田が付く地名に至っては「西早稲田」が1丁目から3丁目、「早稲田鶴巻町」、「早稲田町」、「早稲田南町」と小割りになり、その境界もわかりやすいとは言い難い。こうした傾向は西から東にかけて強くなっていくが、以東「牛込」「市谷」もまた同様である。新宿区の特徴のひとつで、江戸時代にまつわる歴史が地名・分割に色濃く残されているようだ。
当該エリア内の鉄道駅は、山手線「高田馬場」駅、都営大江戸線「西早稲田」駅、東京メトロ東西線「早稲田」駅である。「高田馬場」駅は発車メロディが「鉄腕アトム」で知られる。「早稲田」駅は早稲田大学側地上口を出て西方向の正面に「穴八幡宮」が見える。向かって右が早稲田通り、左が諏訪通りに分岐する。朱の色が鮮やかで、印象的な光景である。ちなみに「高田馬場」「西早稲田」の神田川をはさんで北側に「高田」という所在地名が1丁目から3丁目まであるが、これは豊島区内である。「高田馬場」「早稲田」が駅名や学校名としては広く知られているが、所在地の範囲となるとやや印象が薄れてしまうのは面積の大きさや行政区が一部分断されているせいかもしれない。
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