連載コラム 都心*街探訪

2014年10月14日

第4回
明るい街「南麻布」

文:坂根康裕 撮影:富谷龍樹

異国情緒あふれる風景

有栖川宮記念公園
NATIONAL AZABU(ナショナル麻布)

環状4号線、通称<外苑西通り>の「広尾橋」を東へ曲がれば、有名レストラン「ひらまつ」のある通りに入る。並びのオープンカフェは、客の多くが外国人だ。道なりに北へ。すると程なくして「有栖川公園前」の信号があり、目の前には上り斜面に鬱蒼と生い茂る木々があらわれる。広大な緑地「有栖川宮記念公園」は、都心とは思えない独特の景観を醸し出している。
隣接する「NATIONAL AZABU(ナショナル麻布)」は外国人向けスーパーマーケットである。パンにチーズ、ワインなどの品揃えが豊富で、肉などは日本人離れしているサイズでも売っている。東日本大震災後に改装工事を行い、バレーパーキングサービスも付加して使い勝手が増したようだ。界隈には、公園を取り囲むようにしてドイツ、フランス、スイス、ノルウェー、フィンランドといった欧州の大使館が集まる。

「有栖川宮記念公園」南側に接する道を「南部坂」という。公園からせり出した大樹の枝葉と向かい合う(ドイツ大使館の)コンクリート打ち放しの壁が、坂の下から上まで延々と続いている。日本の自然とドイツの厳格さを象徴する空間のようで興味深いものがある。
坂名の由来は、辺り一帯が盛岡藩南部美濃守の下屋敷であったところからきている。その後有栖川宮邸となり、昭和初期に東京市に寄付され公園となった。南麻布といえばやはりこの緑豊かな5丁目のイメージが強い。高台にあたる公園北側は、高級マンションが立ち並んでいる。
「南麻布」地名の地区内における地下鉄駅は、東京メトロ日比谷線「広尾」駅があるのみ。南に首都高目黒(2号)線「天現寺」の出入り口があって、マイカーでの移動はいたって便利なロケーションといえるだろう。

「品川」の発展がもたらす影響

前回の【『高輪』の将来性】でも触れたが、品川地区のインフラ整備には環状4号線の延伸が含まれている。現在目黒通りで止まっている同線が、品川まで延長。さらに、(あくまで構想段階ではあるようだが)そのまま首都高に直結させるという。
外国人向け高級マンションは、ホームパーティを開きやすい間取りや機能性の高いキッチン設備が求められるが、何といっても大きな面積の住戸が必須となる。200u〜300u程度の広さを確保し、2バス3トイレを標準装備にした物件は、都心でもその選択肢が限られてくる。が、その数少ない候補に挙げられるのが他でもない「南麻布」であろう。
街全体が南に傾斜し、陽光を目一杯浴びるかのように明るい街並みが印象的。海外の訪問者も交通利便性の良さと自然の豊かさを身近に感じることができるだろう。生活のしやすい環境が整っている南麻布は、今後ますます異国情緒あふれる街並みへと継承されていく可能性が高いといえそうだ。