連載コラム 都心*街探訪

2014年9月16日

第3回
「高輪」の将来性

文:坂根康裕 撮影:富谷龍樹

恵まれた高台

ペアシティルネッサンス高輪

「高輪に住むなら4丁目がいい」。都心の住宅街を数多く見聞きしてきたある主婦の声だ。あまりに具体的で明瞭な口調だったため、何年も前のことだが今でも記憶に残っている。たしかに、神社仏閣や学校が集まる1丁目〜3丁目に対し、4丁目はその景観がガラッと異なってくる。広大な敷地を有するホテルや迎賓館が緑豊かな街並みを形成し、邸宅や高級感のあるマンションがひっそりと立ち並んでいる。
「第一京浜」(国道15号線、旧東海道)を川崎方面から北上し、JR山手線を越えようとする手前あたりから、都心方向に小高い丘の上の森が見える。その中に立つレンガ色のマンション「ペアシティルネッサンス高輪」は大物芸能人がかつて住んでいたことで有名だ。手前には三菱グループの迎賓館「開東閣」。高輪のランドマークといえば「プリンスホテル」群という人もいるだろうが、冒頭にもあるようにやはり4丁目の高級マンションや財閥企業の迎賓館が育て上げた自然豊かな景観が象徴的だと主張する人も少なくないだろう。

高輪の地形は総じて海側に傾斜する斜面地である。したがって、西側にあたる尾根伝いの(南北を行く)道は、昔は見晴らしが良かったらしい。「東京湾に面した高台で、江戸の街を一望できたといわれています。地名の由来は諸説ありますが、高台の縄手道であるところから『高き縄手』の略で、のちに高輪と書き改めたといわれています。(中略)この道は旅人の往還としての役割を担っていました。東は海、西は寺院や町屋のみられる古くからの片側町でした」(「港区旧町名由来板」より)

東西を第一京浜と第二京浜ではさまれた「港区高輪」は4つの鉄道駅に隣接している。西の第一京浜側にはJR「品川」駅と都営浅草線「泉岳寺」駅。東の第二京浜側には同「高輪台」駅と東京メトロ南北線、都営三田線両線の分岐点となる「白金高輪」駅がある。高台にあたる二駅が「高輪」を名乗ることから、やはり同地名は高いところから見晴らせる場所とのイメージを含有しているのだろう。

変貌する「品川」界隈

山手線品川―田町駅間新駅開業に伴う再開発予定地

さて、昨今経済界とりわけ不動産の話題は「品川の将来性」で持ちきりだ。JR山手線「品川」と「田町」駅間の新駅とそれに伴う再開発。リニア中央新幹線も「品川」駅発着決定。さらに羽田から東京駅へ新線も計画されている。道路交通では、目黒通り(白金台)で止まっている環状4号線が品川まで延伸。さらに海まで伸ばして首都高と繋げる構想までマスコミで取り沙汰された。現在は「東京」駅周辺の「丸の内・大手町」がビジネス拠点の中心だが、将来「品川」にその軸足が移っていくのではないかとまでいわれている。

未来の「品川」駅周辺に関心が高まるのは必然として、気になるのは「高輪」の街並み。大規模なホテル群はさておき、中低層の閑静な住宅街はどのように変貌していくのだろうか。海外のビジネスマンも満足のいく住宅が足りないといわれているが、個人的には「落ち着いた景観にゆとりある住まい」の第一候補になると思うのだがいかがだろう。再開発が進めば進むほど、その希少価値はますます高まるに違いないと予測している。