三井の賃貸レジデンス Park Axis 月島マチュアスタイル

オピニオンインタビュー

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VOL.03

PROFILE

塩澤 誠一郎

ニッセイ基礎研究所 社会研究部 准主任研究員

50代以上で
住み替え派が
増えている。

今の家に住み続けるのか、新たな家に引っ越すのか——。50代を迎えた多くの方が、今後の住まいについて一度は考えたことがあるのではないでしょうか。かつては終の棲家として住み続ける人が多かったのに対し、近年は住み替えを選ぶ人が増えてきているといわれます。生活にゆとりがあり、行動的な50代以上の人を「アクティニア」と呼び、住宅や都市政策を研究しているニッセイ基礎研究所 塩澤誠一郎さんに、50代以上の住まいへの意識がどう変化しているのか、伺いました。

April 28 2016
Photo: Katura Komiyama , Text: Kayo Murakami

首都圏50代以上の4割が「アクティニア」

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塩澤さんはご自身のレポートの中で、アクティブな50代以上の人々をアクティニアと呼んでいます。アクティニアの特徴を教えてください。

塩澤

アクティニアとは、アクティブなシニアを意味する造語で、「健康的で生活にある程度ゆとりがあり、知的好奇心を持って自立した生活を送っている行動的な高齢者」と定義しています。
具体的にいうと、暮らし向きは普通と感じていて家計にゆとりがあり、子どもとの同居を求めず、自立した生活をしている。そして、自分のやりたいことを積極的にしていきたいと考えている。これらの要素をすべて備えている高齢層をアクティニアと表現しています。
2011年に行った我々の調査では、首都圏に住む50代以上の約4割がアクティニアであると推計しました。今後はアクティニア層がもっと増えていくのではと考えています。

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アクティニア=マチュア世代といえますね。この世代の住まいに対する意識が変わってきているとのことですが、どんな変化がありますか?

塩澤

これまでは、結婚して子どもが成長したら郊外に分譲マンションや庭付き一戸建を購入し、そこにずっと住み続けるというのが平均的な住まいの選び方でした。しかし、近年では、持ち家からさらに住み替える層が増えています。
平成25年の住宅・土地統計調査によると、50歳以上で持ち家から民間借家に住み替えた層が約7%でした。前回、前々回の調査ではいずれも2%程度でほとんど目立たない数字だったことを踏まえると、これは大きな変化。新たなトレンドだといえます。
子どもが独立して家を出てしまい、周りに住むのも高齢者ばかり。周辺に楽しみは少ないし、若い頃は気にならなかったけれど年を取って郊外の家が不便に感じてくる。そんなときに、従来の高齢者とは異なり、「この家がすべてではない」と考える人が増えているのでしょう。

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住み替え先には何か特徴はありますか?

塩澤

住み替え派の中でも、60~70代の場合は高齢者向け住宅に住み替えるケースがありますが、50代くらいの比較的若い人々は便利な立地のマンションに住み替えるというケースが多くみられます。なかでも、最近は賃貸へ住み替えるという動きが目立ってきています。
我々が実施した調査でも、アクティニアの約4割が将来的に住み替えの可能性があると回答し、さらに住み替え派の約17%が賃貸を希望するという結果でした。
こうした統計から、50代以上の住み替えが進むとともに、住み替え先が多様化してきたということがわかります。

賃貸希望派の6割が、「ライフスタイルの実現」を重視

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住み替えの理由としては、どんなものがありますか?

塩澤

きっかけとしては、定年、子どもの独立などによるライフステージの変化が多く、住まいの老朽化、維持管理が大変、アクセスが不便だからといった住み替え理由が多いです。
しかし、アクティニアに限ってみると内容が少し変わってきます。アクティニアは経済的にも精神的にもゆとりがあり、これから先の長い高齢期を充実させたいという意識が高く、自分のライフスタイルを追求するためにお金と時間を使いたいと考えている人が多い。そのため、ライフスタイルに合わせて最適な住まいを選択するために住み替えを選ぶ人が増えています。
アクティニアを対象に「住まいを選ぶ際に重視すること」を訊ねた調査では、一般的に重視される「価格」「立地」「間取り」に加えて、「趣味やライフスタイルが実現できること」を重視する割合が過半数を超える結果となりました。なかでも、賃貸希望の住み替え派は「趣味やライフスタイルが実現できること」と回答した人が6割以上と、特に顕著でした。つまり、自分のライフスタイルを実現させるための住まいとして、積極的に賃貸を選んでいるということです。

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賃貸への住み替えを希望している方は、どんな住まいを求めているのでしょうか?

塩澤

それはもう、人それぞれですよね。「自分のやりたいことができる」というのが住まいを選ぶ重要な基準になるわけですから、当然、求める住まいも多種多様です。
実際にお話を聞いたアクティニアの中には、料理が趣味で、友人が集まりやすくパーティーなどをしやすい住まいを望む人もいれば、普通の主婦だけど手芸に打ち込んでいて、家事をしながら趣味に没頭できる空間がほしいという人もいました。

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最初にやりたいことがあって、それができる家を求めているんですね。

塩澤

そうです。今の家でもできるけれど、より充実させるためにふさわしい住まいへの引っ越しを検討したい、という意識があるのでしょう。
もう少し年齢が若かったら、注文住宅で自分好みの家を作ることができるかもしれませんが、自分が高齢期に差しかかり、これからどうするかを考えたときに、費用面などで負担が大きくなります。そうなると、今すでに世の中にある賃貸住宅の中から、自分のやりたいことが実現できて、理想のライフスタイルに合う物件を選ぼう、という意識になるのではと思います。

塩澤 誠一郎(しおざわ せいいちろう)

ニッセイ基礎研究所 社会研究部 准主任研究員。研究・専門分野は都市・地域計画、土地・住宅政策、文化施設開発。1994年、株式会社住宅・都市問題研究所入社。2004年ニッセイ基礎研究所、2014年より現職 技術士(建設部門、都市及び地方計画)。レポートに、「アクティニアが住まいに求めるもの~首都圏112万のアクティニアに今後住み替えの可能性が~ 」(2014年3月)、「地域の課題に応える賃貸住宅-地域経営的観点からのコミュニティ型賃貸住宅の可能性 」(2014年4月)など。