三井の賃貸レジデンス Park Axis 月島マチュアスタイル

ライフスタイル

[ 前編 ]

フランスに学ぶライフスタイルのヒント

どんな街で
どんな家に暮らすか。
毎日を楽しむために
住まいを整える

日々の小さな喜びを見つけることが上手く、人生を楽しむのが得意なフランス人。
彼らのライフスタイルには、自分らしく暮らすためのヒントがたくさんあるはず——。
そこで今回注目したのは、フランスの住まい事情。フランス人流の自分らしい住まいの作り方について、編集者・フランス語講師など幅広く活躍し、街にも造形が深いカトリーヌ・ルメタさんにお話をうかがいました。

January 21 2016
Photo: Yosuke Owashi , Text: Kayo Murakami

多くの時間を過ごす「家」は、とても大事な場所

古い物件が多いフランス。100年越えの物件も数多く、年月が経つほどに価値が高くなるのが一般的です。そのため、古い物件に手を加えて、自分好みにアレンジして暮らすという考え方が広く根付いているそう。

「フランス人は家をとても大切に考えています。1日の多くの時間を過ごすから、快適な空間にしたい。ですから、たいていのフランス人は賃貸であっても持ち家であっても自分たちで家のリフォームをします。間取りも変えますし、壁や床も好きなように変えます。修理だって、自分でできることは自分でします。古い物件だと水漏れなどのトラブルが多いので工事費が高くなりますが……それでも自分好みの家に住みたいという人が多いと思います」とカトリーヌさん。

カトリーヌさんが以前パリで住んでいた家も約100年前の建物。かつてはチーズ店だったスペースをリフォームしたというちょっと変わった物件で、とても気に入っていたそうです。

「1階で道路に面した大きな窓があって、間取りは地下室も含めて65㎡くらい。前のオーナーがすでにリフォームしていて、私も気に入ったのでそのまま住みました。シンプルな空間のほうがリラックスできるので、あまり物を置かずにすっきりとしたインテリアで暮らしていました。ひとつだけ、どうにかしたいと思ったのが道路に面した窓の外。鉄のブラインドを取り付けたかったのですが、建物が建てられた1908年型のものが見つからなかったので、パリ市の許可を得られず……あきらめました。外観に影響する部分の手直しは、パリではとても厳しいんです」

古い家に手を加えて住むことが当たり前のフランス。こうした文化があるからこそ、自然と家に対するこだわりも高まるのかもしれません。

パリに住んでいたときのカトリーヌさんのご自宅の写真。書斎、ダイニング、客間などがある。

住まい選びで重視するのは「街」

家の内装を自分で手がけることが多いため、フランス人は家そのものよりも「街」を重視して家を探すことが多いそう。

「街の静かさ、安全、清潔感、周辺のお店や緑がどれくらいあるかといった街の環境を大切にする人が多いですね。広さやエレベーターの有無、窓から見える景色も重要。パリなら、エッフェル塔が見えたらもう最高です! 私の母が住んでいた家は8階で窓からエッフェル塔が見えたので、わざわざ友人を招いて景色を見せていました。どんな街に住むかによってライフスタイルや休日の過ごし方なども変わってくるので、自分の中で大切にしたいものを決めて、住みたい街をじっくりと選ぶんです」

もちろん、カトリーヌさんは日本で今の家を探すときも、いろいろな街を見て歩いたそう。

「私は、緑があって、小さいけれど良い物を扱うお店があって、雰囲気がいい街に住みたかった。今の家を探すときは、いろいろな街の不動産屋さんを回って40件くらい物件を見ました。『リフォームされていない物件』というのも条件だったので、とても苦戦したんです。今住んでいる街は、緑が豊かで、すぐ近くにお寺もあって、最初に歩いたときにすぐに気に入りました。しかも紹介された部屋には大きなテラスがあり、広さもちょうど良かった。それで、実際に中を見ずに間取り図だけで決めてしまいました」

その後はリフォームして自分の好きな空間に。日本の家によくある廊下をなくして広々とした空間にし、窓や床などもすべて変えました。しかし、そこまで家にこだわると、その分費用もかかってくるはず。これについてカトリーヌさんは、「自分らしい暮らしをするために必要なものだから、住む場所にお金がかかるのは仕方がない」と言います。

「昔、日本に来たばかりの頃、友人に住んでいる家の家賃を伝えたら、『何でそんなに高いところに住んでるの!?』とびっくりされたことがあります。確かに、当時の私は給料の大半を家賃にあてていました。けれど、私にとって家はとても大事な場所。自分らしい暮らしがしたいし、毎日楽しく過ごしたいから家を充実させたい。だから、高い家賃を払うだけの価値があると思います」

好きなことができる街、快適に過ごせる家。そんな、「今の自分にとって価値ある家」に住むことが、人生を楽しむことにもつながるようです。

[ 後編 ]

フランスに学ぶライフスタイルのヒント

今日を楽しむために、
年齢に関係なく
やりたいことをする

February 5 2016
Photo: Yosuke Owashi , Text: Kayo Murakami

友人を招いておしゃべりを楽しむ、フランス流ホームパーティー

家にこだわりを持つフランス人。「自分らしい家に住みたい」という理由のほかにもうひとつカトリーヌさんが挙げたのが、「ホームパーティーをよく開催するから」という理由です。

「フランス人はホームパーティーが大好き! 特別なことがなくても、友人やご近所さんを自宅に招いてもてなして、おしゃべりを楽しみます。残業が少ないから夜のフリータイムが長いですし、日曜日にはお店もみんな閉まってしまうので、家で料理を作ってみんなで過ごすのです。特別豪華なものではないけれど、ワインを飲んで、おしゃべりして。そうやって友人とゆっくり過ごす時間を大切にしています。フランスの伝統のひとつだと思います」

友人を招き、おもてなしの舞台となる家。「人目に触れるから、見られても恥ずかしくないように家を整えておかないといけないんです。それに、センスがいいと褒められたいですしね」とカトリーヌさん。ホームパーティーの始まりは、インテリアチェックから始まることも多いようです。

「誰かの家に招待されたときは、食事の前にまず家中を見て回ります。みんな自分でリフォームしているから、人の家に興味があるんですね。全部の部屋を見せてもらって、『どうやって作ったの?』『何を使ったの?』など、たくさん質問します。それだけで1時間以上盛り上がってしまうことも。招いた人も、みんなに自分の家を自慢したいんです(笑)」

こうしたホームパーティーの文化があるため、都会でも普段からご近所付き合いが盛んで仲が良いそう。また、毎年5月にはフランス全土で『la Fête des voisins(隣人の日)』というイベントが開催され、盛り上がるのだとか。

「『隣人の日』は、同じアパルトマンに住む人が集まってパーティーを開催するイベントです。アパルトマンの中庭や目の前の道路にテーブルを置いて、飲み物や食べ物を持ち寄って、食事を楽しみながらご近所さんと交流を深めます。とても楽しいイベントです。今ではヨーロッパ各地で開催される大きなイベントになりました」

友人やご近所との付き合いを楽しみ、おしゃべりに興じるひととき。人が集まる舞台としても、家はとても大切な場所と言えるのです。

何かを始めるのに年齢は関係ない

フランス人は普段からプライベートの時間を充実させることを意識しているためか、引退した後も自分なりに人生を満喫している人が多いそうです。多くのフランス人にとって、年齢を重ねることはむしろポジティブな要素なのだとか。

「年を重ねた分だけ知識や経験が増えるので、『もっと人生を楽しめる』という意識の人が多いと思います。何歳だからこれをしなきゃいけないとか、逆に何歳だからもうできないといったことは、みんなあまり考えません。
私自身、人を年齢で判断することには反対ですし、人はいつまでも精神的にも物理的にも25歳だと考えています。年齢にかかわらず、そのときに自分がやりたいことをするのが一番いい。人生は短いし、明日何が起こるかわからないですから、今をどう楽しむかが大切だと思います」

フランスでは、定年を迎えて引退してから、ボランティアやスポーツを新しく始めたり、新しいコミュニティーに参加したりする人が多いそうです。また、自宅でガーデニングやリフォームを始める人、裕福な人の場合は狩猟を始める人などもいて、定年後の楽しみ方は人それぞれ。

「もうすぐ90歳になる私の継母も、自分で車を運転してあちこち出かけています。ときには1日800㎞走ることも! 大好きなワインもたくさん飲むし、チョコレートもよく食べています。自分が好きなことを楽しんでいます。本当に元気です。フランス人はやりたいことを我慢するのが苦手なんです(笑)」

いつまでも自分らしく、人生を楽しむ。こうしたフランス人の自由な生き方は、これからのライフスタイルを考えるときの参考になるはずです。

カトリーヌ・ルメタ(Catherine LEMAITRE)

フランス・パリ近郊外出身。編集者、文筆家、翻訳家として出版に携わるほか、フランス語講師としてアンスティチュ・フランセ東京で美術史をテーマとした授業などを担当。翻訳本に『パリのかわいいガーリー・インテリア』(エディシォン ドゥ シェーヌ)、著書に『ル ジャポン』(エディシォン ドゥ シェーヌ)や、『銀座-37ストーリーズ』(ラトリエール-アンヴィル)など多数。

取材協力:アンスティチュ・フランセ東京