三井の賃貸

三井の賃貸 レジデントファースト

私の今の生活に欠かせないファシリティ

21時、残業が終わって家路につく。

職場の最寄り駅は「新宿三丁目」。都営新宿線で一本だ。デパートの売り場に立ちっぱなしの一日でも、乗り換えなしというだけで少し気がラクになる。

自宅は、大規模な賃貸マンション。1階にはスーパーが入っている。そして、それが2階の通路でマンションのエントランスと直結しているのだ。雨の日も傘を差さずに買い物ができる。内見で、この動線を見て即決した。

スーパーの営業時間は7時から23時まで。だから帰りが多少遅くなっても、夕飯を調達できる。お総菜は、夕方になると割引シールが貼られはじめる。さらに時間が経つと、もっと割り引かれたものが、夕方のシールの上に重ねて貼られていることも。別に、ねらっているわけではない。けれど平日の帰宅は、たいていその割引がいちばん深まる頃なのだ。

そして、2階のエレベーター前でときどき同じ女性に会う。

同じマンションの住人。私の母と同じくらいの年だろうか。名前は知らないし、向こうも私の名を知らない。それでも、何度か会ううちに言葉を交わすようになった。同居の息子さんは、夜はほぼ外食らしい。

ある晩、彼女は手にしたお惣菜のパックを見て言った。
「夕方に一度来たのだけど、この時間になるともっと安くなるから出直してきたのよ」と。
言い方がおかしくて、私もつられて笑った。会話はそれで終わり。エレベーターを待つあいだだけのことだ。

先に彼女が下りる。

なぜか、実家の母を思い出す。母も値引きの時間をよく知っていたなあ。「今日は安かったから」と言って、食卓に惣菜を並べていた。あのころは、ただの生活の癖だと思っていた。

土曜の朝は、フィットネスルームに行く。

マシンは使わない。お目当ては、壁一面の大きな鏡だ。自宅に、こんなにも大きな鏡はない。ここでは、自分の姿勢がとてもよく見える。誰の目も気にせず、ヨガに集中する。  

会社でもなく、自宅でもない時間。しかも、家の玄関から5分とかからない。土曜の朝の、その1時間がとても気に入っている。

この建物を設計した人は、たぶん便利さを考えていたはずだ。雨に濡れないこと。遅くまで店が開いていること。体を動かせること。どれも、ひとり暮らしを支えてくれる。

でも、支えられているのは、それだけではない。

名前を知らない隣人との、二言三言。鏡の前の静かな朝。設備として用意されたものが、いつのまにか、私の暮らし方そのものになっていた。

この春から、企画の仕事も兼任することに。はじめての職務でプレッシャーもあるが、その緊張感が今のところやりがいにつながっている。

多少のストレスもなくはないが、身の回りのファシリティが日々気持ちをリセットするのに、少なからず貢献してくれている。ここに住んでいる間に、公私ともにステップアップができたらいいのだけれど。

文・樹山ハル / イラスト・越智あやこ / 企画:(株)PRエージェンシー